
3DCG制作時の全体の流れを紹介する。
工程が一通り書かれた記事があまりないので、覚書ついでにワークフローや各工程での注意点などを書き残しておく。
モデル制作工程長め。
具体的なやり方は長くなるのであまり書かない。
もくじ
制作前のまえがき
参考資料探し
作るものの質感・形状・わかりやすい構造解説図・全体の完成予想図・雰囲気などの参考資料を用意する。
- 参考資料は多ければ多いほどよい
- 高解像度がよい
- Google Chrome の画像を右クリックから画像検索機能を利用すると、より高解像度の画像や関連画像をネットから探すことができるので、自分はよく利用している
なぜ資料が必要か
妄想を頼りに作らず、既存の画像や現実のものを見て、よく観察しながら制作するため。
造形は「無意識の意識化」である。
人間の認識は思っている以上に漠然としており、「記号」として捉えている。
極端に言うと、「手」とは「手のひら」に「指」が「5本」生えたもの、程度の認識しか持っていない。
実物をよく観察することにより、指が生える位置、指それぞれの長さの違い、折り曲がる箇所、肉のつき方、骨の出っ張る箇所、握った場合の形状などを理解する。
「記号」ではなく構造を認識する。
絵が下手な理由は、記号でしか認識していないものを描こうとするからである。
目標とする資料を探す
世に作品は溢れており、作ろうとしているものには大抵前例がある。
その中の自分の作りたい理想図に近い出来のよい資料を探して目標に設定し、同等かそれ以上を目指す。
三面図・資料イラスト
三面図は、要素ごとの比率や、見えない部分のデザインをはっきりと描き、制作を補助するためのもの。
あるとよりよいが、必須ではない(そもそもないことの方が多い)。
ここで曖昧な箇所があると制作途中で悩み、作業の手が止まることになる。
結局描かれていない部分はあるので、そこはモデラーがイメージに合うように補う。
正面図と側面図同士などでの破綻はよくあるので、下絵として使う場合は過信しすぎないこと。
コンセプトアート
作品の雰囲気を伝えるため、完成イメージを描いたもの。
なければ既存の完成イメージに近い参考資料画像で補う。
ある程度作った制作途中のものをレタッチして、コンセプトアートとすることもある。
工程に慣れる
全体の流れを掴み、慣れること。
1つの工程だけ練習するのではなく、毎回最後まで作り上げる。
モデル制作は、大変面倒な工程を複数重ねた上で完成する。
正しく変形させるために最適なポリ割が必要であったり、テクスチャを塗りやすくするためにきれいなUV展開が必要など、それぞれの工程は相互に関係がある。
準備
- 不明点の洗い出し
- 技術的・実力的に実現可能かどうか調べる
- 必要時間の予測
- 作る手順を想定
- 充分な資料画像集め
- 規模によるが、最低30枚・制作が終わる頃には100枚以上を目標に
- ArtStation・Pinterestなどを利用
- Pinterestなら作る上での細かいノウハウも見つけられやすい
- 人体のアナトミー・イラストの小技・フリーブラシ紹介・ポリゴンのトポロジー・うまく変形するポリ割りなど
- 主な検索ワード
- face topology riging model Anatomy 3ds max maya Blender hardSurface Character
- 人体のアナトミー・イラストの小技・フリーブラシ紹介・ポリゴンのトポロジー・うまく変形するポリ割りなど
モデリング
基礎
- サイズは実際の大きさに合わせる
- 作ったモデルを今後アセットとして使い回せるようにするため
- 接地する
- ワールド座標の上軸0に位置を揃える
- 武器などの場合は、持ち手部分に揃える
輪郭・シルエットを見る
ポリゴンとは所詮テクスチャを貼るための「土台」である。
見栄えはテクスチャで表現する。
シルエットが整っていて、 正しく変形できればあとはどうでもよい(他には作業のしやすさやデータの軽さがある)。
シルエットに影響しないポリゴンは削減してもばれにくい。
- シルエットが表現できている
- 正しく変形できる
- 快適に作業できるように最適化されている
初期ポーズ(TスタンスかAスタンスか)
既に決まっているならそれに習うのがよい。
どちらもそれぞれ利点がある。
- Tスタンス
- 腕を上げているので、体の側面と腕が編集しやすい
- 手が編集しやすい
- デメリット …… 腕をおろしたときに腕の長さなどの印象が変わる。制作途中でも仮にボーンを入れておろして見てみること
- Aスタンス
- 一般的には腕を下ろしている姿勢が多いので、より自然なポーズで作れる
- デメリット …… 脇や胴体の側面が作りにくい
モチベーションの維持
早めに仮のマテリアルで色を付け、ライティングを付けて、レンダリングする。
モチベアップにもよいし、3DCGのビューポート表示だけではわからない最終的な印象を見ることができる。
キャラクターであれば顔を作って仮の瞳を書き込むなど、一番重要となる部分から作ると全体の印象もつかみやすくモチベーションも維持しやすい。
序盤は極力ローポリで作る
頂点の少なさは作業のしやすさに直結する。
どんなに頂点をまるごと動かそうとしても、結局最終的には頂点を1つ1つを移動したりスキンを塗ったりすることになる。
ただし、必要になったらどんどんポリゴンを割っていくこと。
トポロジー(ポリ割り)
慣れないうちは気にしないでよい。
トポロジーはきれいな方がよいが、経験してわかってくるものなので、トポロジーに悩んで立ち止まらないこと。
作っていくうちに美しいトポロジーの方がきれいに曲面ができたり、編集しやすいことに気付いていくだろう。
プリミティブから分割数を上げたり押し出していくのがトポロジー的に正しいものが作りやすい。
美しいトポロジーとは
- 物体の流れに沿っている
- 辺ループを使ってみて、きれいに輪切りにできる
- 四角形面1つ1つに歪みがなく、平らである
- 四角形面の形が正方形に近い
- ポリゴンの密度が均一
リトポロジー
将来的には自動化されるべき作業。
基本的にZBrushのZRemesherを使うことを考慮し、これで難しい部分を手動で修正する。
リトポ補助ツールはソフト問わず多く存在するので、基本機能だけでやるより積極的に使う方がよい。
ただし、意図したトポロジーを得ることは自動では難しいので、確実性を求めるのなら全て手動でやった方が最終的には早い。
1から作った方が早い
汚いポリ割りのものや他人のデータを流用する時、大抵の場合は修正するより作り直した方が早く・きれいになることが多い。
ただ、流用できるなら積極的に利用し、時間短縮するべき(※権利的に問題なければ)。
ゴミの除去
ゴミは注意していてもできる時はできる。
その都度きれいにしていくことも大事だが、次の工程に移る前に今一度全体を見渡して掃除する。
モデリングソフトのビューポート表示だけでは見つけづらいミスもあるので、一旦ライティングのある本番のシーン内に入れてみるのもよい。
- 不要な面
- 不要なオブジェクト
- Nゴン
- 重複頂点
- ゴミ頂点
- ノーマルの反転
- 裏面が見える隙間
- プロジェクトデータ内の不要なパス
- スムージンググループの整理
データを整理
作業していくうちにモデルのオブジェクトには不要な情報ができるため、問題が起こらないように状態を初期化する必要がある。
新規プリミティブに結合すると手っ取り早く初期化できる。
- 原点をワールド座標0にする
- モデルの底面を縦軸0に合わせる
- 移動を0・回転を0・スケールを1(初期値)にする
- モディファイアを適用する(集約)
- マテリアルは極力一つに(場合による)
- オブジェクトは極力一つに(編集しにくければ最終的でよい)
- わかりやすい名前を付ける(オブジェクト名・マテリアル)
- サブサーフはすべてのモディファイアの上におき、最適化表示にする
ルートオブジェクトに親子付けする
エンプティ(別ソフトでのロケーターやポイント)をワールド0位置に作成し、モデルのメッシュ全てを親子付けする。
これにより、オブジェクトを管理しやすくなる。
アニメーションは、メッシュオブジェクトではなくこのルートオブジェクトに付けること。
UV展開
長くなるので、詳細は上記リンクにまとめた。
主に気をつけている点は下記。
- 自動化できる所はなるべく自動で
- 目的に即したUVレイアウト・展開にする
- 2Dペイントか3Dペイントどちらで作るか考える
- 模様テクスチャを使うような場合はグリッド状にする
- 手書きでの修正を考えた配置にする
- 同じパーツや質感のUVピース同士はなるべく近くに配置する
- ピース同士の隙間を詰めて、スペースを節約する
- UV専用ツールの高精度な自動パッキングは既にあるのでそれらを利用した方が早い
- 大きいピースの位置を最初に決める
- UVの重なりはNG
- UVの反転はNG
テクスチャペイント - Substance Painter
詳細な内容は上記リンクの記事にまとめた。
2D・3Dペイントの長所・短所を理解する
3Dペイントの方が利点は多いが、完全に3Dペイントソフトだけで完結できるわけではないので、アルファやパターン素材作りはPhotoshopなどで作る、というような分担は必要。
それぞれ利点・欠点を理解し、併用してテクスチャを制作する。
3Dペイント(Substance Painter)
メインのペイントツールとして使う。
利点
- 3D空間から直接描くことができる
- UVを変更しても描いた情報を保持できる
- 複数チャンネルを同時に作成することができる
- モデルからベイクした情報を利用して、ディティールを付けることができる
- Photoshopのようにレイヤー管理できる・各種フィルターが扱える
- ビューポートが高品質
- ほぼ完全非破壊
欠点
- データが重い
- ベイクする必要がある
- 詳細な画像編集機能はPhotoshopまでとはいかない
2Dペイント(Photoshop・クリップスタジオなど)
Substance Painterではやりにくい作業を行う。
複数チャンネルが不要で、3Dペイントする必要がないなら、Photoshopだけで完結した方が楽な場合もある。
- テクスチャ素材の調整
- ゴミ取りや色調補正・タイリング化など
- アルファ画像の作成
- 模様の作成
利点
- 平面的なテクスチャを描きやすい
- 多用な画像編集ができる
欠点
2DのUV空間からペイント・保存し、CGソフトで画像を再読み込みして確認しながら作業する必要がある。
- 複数チャンネルを同時に作成することができない
- 直接ペイントできないので、直感的に作業しにくい
- すぐさまモデルで結果を確認できない
- テクスチャ更新が手間
- UVが変更された場合に対応しにくい
ウェイトペイント(スキニング)
事前にすべての関節を確認しやすいように回転させた、チェック用アニメーションやなにかしらのダンスアニメーションを用意しておく。
このモーションを再生してチェックしながら、ウェイト設定する。
ウェイトは影響範囲と言うより、「変形度合い」と考えた方が理解しやすい。
- 機械など一切変形しないものは1.0で完全に塗りつぶす
- 生き物など変形するものなら滑らかにグラデーションさせる
うまく変形しない場合の問題点
- ウェイトが正規化されていない
- ポリゴンの割り方がよくない
- ポリゴン数が足りない・多すぎる
- 伸びる面は細かく、縮む面は荒く分割するなど
- ボーンの回転位置が違う
- ボーン数が足りない
簡単なスキニング
(3ds Max)
まず、弱めの数値でウェイト設定、選択範囲をせばめて、少し大きい数値でウェイト設定、これを繰り返すことで、手動でグラデーションを付けることができる。
- Hipsなど大元のボーンですべて1.0にして塗りつぶし、ウェイトを初期化
- ボーンを選択
- 付けたいメッシュの真ん中をループ選択
- 「グロー」で選択範囲を拡大
「.1(青)」など弱めのウェイトを設定 - シュリンクで選択範囲を縮めて「.5(オレンジ)」
- 数回繰り返し、ウェイトのグラデーションを作る
- 一番影響させたい所に「1(赤)」
- すべてつけ終えたら、始めにやった大元のボーンの無関係なウェイトを0.0にする
Blender
Blenderで、上記の数値入力によるウェイト設定も可能ではあるが、必要な操作が多く面倒。
なので、上記と似たような操作でウェイト設定ができるアドオンを自分で作った。
拡大・縮小選択などがツールからでき、0.0~1.0の数値を割り当てることができる。
スキンを付けた後、リグを動かして移動した頂点位置の初期化する方法
3ds Max
一度スキンを初期化してスキン情報だけを再読み込みする。
これによりスキンを付けた後でもリグの位置調整が可能。
- 拡張パラメータ > 保存 で、エンベロープをファイルとして保存
- 一度ボーンをすべて除去・もしくは新規スキンモディファイアを作成し、ボーン追加
- 拡張パラメータ > ロード
リギング
rigifyやBiped、CATなどのプリセットを利用する。
既存のリグを使用する場合でも、リグの基本的な構造は理解しておいた方がよい。
骨は現実のものの正しい位置に配置するとよくなりやすい。
- 肘の回転位置は、腕の中心ではなく肘に近く
- 膝の回転位置は、膝に近く
- 足の付け根は少し外側
- 腕、腕を上げる場合は肩・肩甲骨も含めて動く
- 手、手首の出っ張りではなくそれの少し先
- 指関節、指のシワらへんで曲がる
- 指全体が曲がる箇所はシワではなく骨のでっぱりに近く
- 肩、腕を下げた時にいかり肩や極度ななで肩にならないように
アニメーション
アニメーションは決めポーズの繰り返しとリズム。
何度も再生し、動きの気持ち悪い点・足りない点をひたすら修正して、見ていて心地よい動きを作り上げる。
キーフレームの間隔やモーショントレールなどを活用して、視覚的に原因を探る。
- リズム
- 動きにリズムが取れていると心地よく感じる
- 溜め
- 余韻
- 慣性。動くものは急に止まることはなく、必ず残った動く力がある
- 重心の場所やその移動
- どこに重心があるか意識してキャラがしっかりと立っていること
- 接地
- 足の接地をしっかりする
- がくつき
- 足がIKのせいでピンと張った状態があると、ガク付いているように見える
- 物の重さ
- 肩の角度
- 肘と胸などの位置関係
チェック
個人制作でも定期的にチェック用画像を書き出す。
最終的な完成度20%程度の、とても大雑把な段階かつ短時間で、モデル全体を完成させて、第1チェックとする。
利点
- 制作者目線ではなくユーザー目線で俯瞰してみることができる
- 最終的な完成図をイメージできる
- 修正すべき点がわかる
- 力を入れるべき点がわかる
- 完成までに必要な時間がわかる
- あとで経過を見返すことができ、モチベーションが上がる
出し方
- 半分サイズで出力して、レンダリングに時間をかけないように
- パースはかかりすぎないように(焦点距離 200m程度)
- ライトは簡単に2つ
- メインライト1.0影あり斜め右上
- サブライト0.5影なしななめ左上
- 主張しないグレー背景
- 1回転した全身・顔アップ
- モデルにルートオブジェクトを親子付けして、ルートオブジェクトに1回転アニメーションを付ける。
- カメラの位置はなるべく動かさないでやると、過去ファイルとパカパカ比較できる。
- 左斜めから見てポーズを付けた決め絵・前・斜め・左・斜め・後ろ・斜め・右・斜め・その他よく映る部分
レンダリング
動画をレンダリングする場合、CGソフトからは、動画ファイルではなく連番画像で書き出す。
これの利点は、複数のPCで分割レンダリングができ、修正したい箇所が出ても部分的にレンダリングし直したりできる。
出力した連番画像をAfter Effectsなどの動画編集ソフトで合成する。
事前に低解像度で確認する
レンダリングに時間がかかる場合は、まず半分サイズや低いサンプル数でレンダリングする。
これでミスがないか確認してから、本番サイズでレンダリングする。
レンダリング確認項目
レンダリング前に設定確認をしっかりすること。
カットごとに連番画像書き出し設定を変更する作業が大変面倒くさい。
- シーンの状態をそのカット用に変更、または確認
- オブジェクト表示状態
- レンダリング可否設定
- 使用するアクション・ライト・カメラ
- 書き出しフレームの指定
- 保存先設定
- 保存先に移動する
- 過去テイクがあるならoldフォルダに移動させる
- レンダリングする
動画編集 - After Effects
- 連番画像をシーケンス読み込み
- もしくはファイルを置き換えや再読込み
- 透過ならフッテージを変換 > アルファ > 合成チャンネルをカラーマット黒にして輪郭のアンチエイリアスの黒を消す
- キュー
- 動画 …… .mov h264
- 画像 …… .png
- 書き出しファイル名を変更する
- 連番の場合は[##]が番号桁数
- レンダリング